QYLDは毎月分配される高配当ETFとして人気を集めていますが、その実態を正しく理解しているでしょうか?
的な配当利回りの裏には、知っておくべきリスクも潜んでいます。
この記事では、QYLDの特徴、メリット・デメリット、そして将来性について詳しく解説し、投資判断のポイントを明確にします。高配当ETFへの投資を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
QYLDの魅力:5つのキーワード🔑
高配当
毎月分配
NASDAQ100指数に連動
カバードコール戦略でリスク抑制
安定収入を求める投資家に人気
QYLDとは?
QYLDの基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
銘柄名 | Global X NASDAQ 100 Covered Call ETF |
銘柄コード | QYLD |
経費率 | 0.61% |
設定日 | 2013年12月12日 |
運用会社 | Global X Funds |
ベンチマーク | CBOE NASDAQ-100 BuyWrite V2 Index |
分配金利回り | 11.53% |
分配頻度 | 毎月 |
QYLDは、Global X Fundsが運用するETFで、NASDAQ100指数を対象にカバードコール戦略を用いることで、高配当と安定収入を目指しています。
カバードコール戦略とは?
NASDAQ関連株を100株、1株1,000円で持っているとします。
あなたは、1ヶ月後に株価が1,050円を超えないだろうと予想します。
そこで、1株1,050円で売る権利(コールオプション)を他の人に売り、1株あたり20円のプレミアムを受け取ります。
100株分なので、合計2,000円のプレミアムを得ます。
得をするケース
株価が1,000円のまま変わらない場合:
株価の変動はありませんが、2,000円のプレミアム収入が純利益となります。
株価が950円に下がった場合:
株価の下落で5,000円の損失がありますが、2,000円のプレミアム収入で一部相殺され、実質3,000円の損失で済みます。
損をするケース
株価が1,100円に上がった場合:
株価上昇による利益は1,050円までの5,000円に制限されます。
プレミアム収入2,000円を加えても、合計7,000円の利益にとどまります。
一方、オプションを売らなければ10,000円の利益が得られたはずなので、3,000円の機会損失が発生します。
収支トントンのケース
株価が1,030円に上がった場合:
株価上昇による利益3,000円とプレミアム収入2,000円で、合計5,000円の利益となります。
銘柄の特徴
- 毎月分配型:
→毎月分配金が支払われるため、安定した収入源として魅力的です。 - 高配当:
→カバードコール戦略により、高い配当利回りを維持しています。 - NASDAQ100指数への連動:
→アメリカを代表するハイテク企業で構成されるNASDAQ100指数に連動したパフォーマンスを目指します。 - カバードコール戦略によるリスク抑制:
→カバードコール戦略を用いることで、株価下落時の損失をある程度抑える効果が期待できます。 - 株価上昇余地の制限:
→カバードコール戦略は、株価が大きく上昇した場合の利益を制限する可能性があります。
ベンチマークの説明
QYLDのベンチマークであるCBOE NASDAQ-100 BuyWrite V2 Indexは、NASDAQ100指数を保有し、同時にコールオプションを売却するカバードコール戦略を反映した指数です。この戦略により、株価が横ばいまたは緩やかに上昇する局面において、オプションプレミアム収入を得ることができ、それが高い配当につながっています。
セクター比率
セクター名 | 比率(%) |
---|---|
テクノロジー | 51.46 |
コミュニケーションサービス | 15.26 |
消費循環財 | 12.58 |
ヘルスケア | 6.28 |
生活必需品 | 6.08 |
素材 | 4.47 |
公益事業 | 1.49 |
エネルギー | 1.21 |
金融 | 0.50 |
不動産 | 0.46 |
QYLDは、テクノロジーセクターへの比率が50%を超えており、NASDAQ100指数の特徴を反映しています。また、コミュニケーションサービスや消費循環財セクターも大きな割合を占めています。このセクター構成は、アメリカの経済成長やハイテク企業の業績に大きく影響を受けます。一方で、金利上昇局面では、グロース株中心の構成のため、株価が下落するリスクも考慮する必要があります。
過去10年の株価推移チャートと分析
QYLDの株価は、2018年までは比較的安定した推移を見せていましたが、2019年と2023年に大幅な下落を経験しています。特に2023年は、NASDAQ100指数の調整の影響を受け、28.85%の下落となりました。一方で、2020年のコロナショックからの回復は力強く、11.38%の上昇を記録しています。全体的には、株価は横ばいの傾向にあり、キャピタルゲインよりもインカムゲインを重視する投資家向けのETFと言えるでしょう。
S&P500過去1年分チャートとの比較と分析
過去1年間のパフォーマンスを比較すると、QYLDはS&P500に大きく劣後しています。QYLDのリターンは2.62%であるのに対し、S&P500は26.60%のリターンを達成しています。これは、QYLDがカバードコール戦略を採用しているため、株価上昇の恩恵を受けにくいことが要因と考えられます。一方で、QYLDは安定した配当収入を提供しており、インカムゲインを重視する投資家にとっては魅力的な選択肢と言えるでしょう。
QYLDの配当金の分析
過去の配当金と増配率、その分析
QYLDは、高い配当利回りを特徴としていますが、配当金の安定性には欠ける側面があります。2016年、2019年、2022年、2023年、2024年と減配が続いており、NASDAQ100指数のボラティリティや金利上昇の影響を受けていると考えられます。
配当金利回りの推移
QYLDの配当利回りは、市場平均を上回る水準で推移しています。しかし、配当金の変動に伴い、配当利回りも変動する傾向があります。
将来のYOC予想シミュレーション
年 | 予想YOC(%) |
---|---|
2024 | 11.51 |
2025 | 11.12 |
2026 | 10.75 |
2027 | 10.38 |
2028 | 10.03 |
2029 | 9.69 |
2030 | 9.37 |
2031 | 9.05 |
2032 | 8.74 |
2033 | 8.45 |
2034 | 8.16 |
現在の株価上昇率・利回りが継続した場合、YOCは減少が予想されます。例えば、100万円を投資した場合、初年度の配当金は約11.5万円となり、10年後には約8.1万円となります。
しかし、これはあくまで過去の成長率が継続した場合のシミュレーションであり、将来の配当金の支払いや成長を保証するものではないため注意が必要です。
QYLD・XYLD・RYLD・JEPQ・JEPI徹底比較!
銘柄名 | 銘柄コード | 過去1年のパフォーマンス | 配当利回り | 経費率 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
Global X NASDAQ 100 Covered Call ETF | QYLD | 3.58% | 11.69% | 0.61% | NASDAQ100に連動し、コールオプションの売却による安定的なインカム収入を目指す |
Global X S&P 500 Covered Call ETF | XYLD | 2.97% | 9.38% | 0.60% | S&P500に連動し、コールオプションの売却による安定的なインカム収入を目指す |
Global X Russell 2000 Covered Call ETF | RYLD | -7.97% | 12.26% | 0.60% | Russell2000に連動し、コールオプションの売却による安定的なインカム収入を目指す |
JPMorgan Nasdaq Equity Premium Income ETF | JEPQ | 13.89% | 9.16% | 0.35% | NASDAQ100に連動し、ELNとコールオプションの売却によるインカム収入を目指す |
JPMorgan Equity Premium Income ETF | JEPI | 5.69% | 7.19% | 0.35% | S&P500に連動し、ELNとコールオプションの売却によるインカム収入を目指す |
カバーコール戦略とは、株式を保有しつつ、コールオプションを売却することで、安定的なインカム収入を得る戦略です。株価が横ばいか緩やかに上昇する局面では有効ですが、株価が大きく上昇する局面では利益が制限される可能性があります。
一方、JEPQとJEPIは、それぞれNASDAQ100、S&P500に連動し、ELN(Equity Linked Notes)とカバーコール戦略を組み合わせたETFです。ELNとは、株式や株価指数に連動する債券の一種で、通常の債券よりも高い利回りが期待できます。
過去1年のパフォーマンスを見ると、JEPQが13.89%と最も高く、次いでJEPIが5.69%となっています。QYLD、XYLDはそれぞれ3.58%、2.97%と、比較的安定したパフォーマンスを示しています。
一方、RYLDは-7.97%と、マイナス成長となっています。
配当利回りは、QYLDが11.69%と最も高く、次いでRYLDが12.26%となっています。JEPQ、XYLD、JEPIはそれぞれ9.16%、9.38%、7.19%と、こちらも比較的高い水準です。
経費率は、JEPQとJEPIが0.35%と最も低く、QYLD、XYLD、RYLDは0.60%前後となっています。
このように、各銘柄にはそれぞれ特徴があります。どの銘柄を選ぶかは、自身の投資目標やリスク許容度などを考慮して判断する必要があります。
10年前に100万円投資していた場合のシミュレーション
年 | 評価額(万円) | 配当額(万円) | 評価額+配当累計額(万円) | 配当再投資評価額(万円) |
---|---|---|---|---|
2015 | 94.6 | 8.1 | 102.7 | 102.7 |
2016 | 91.9 | 6.6 | 106.6 | 106.4 |
2017 | 88.8 | 6.9 | 110.5 | 109.8 |
2018 | 98.4 | 10.5 | 130.6 | 132.1 |
2019 | 84.7 | 9.2 | 126.1 | 122.9 |
2020 | 94.3 | 10.1 | 145.9 | 147.0 |
2021 | 90.1 | 11.3 | 153.0 | 151.9 |
2022 | 88.6 | 8.7 | 160.1 | 157.9 |
2023 | 63.0 | 8.1 | 142.7 | 120.5 |
2024 | 70.8 | 4.8 | 155.3 | 140.2 |
10年前に100万円をQYLDに投資していた場合、配当金の累計額は約55万円に達しています。しかし、評価額は70.8万円にとどまっており、元本割れのリスクも存在します。QYLDは、高配当を目的とした投資には適していますが、キャピタルゲインを期待する投資には不向きと言えるでしょう。
リスクファクター分析
項目 | 値 | 説明 | 評価 |
---|---|---|---|
ベータ | 0.65 | 市場全体の動きに対する感応度 | 市場平均よりも低いボラティリティ |
52週ボラティリティ | 13.39% | 過去1年間の株価の変動幅 | 中程度のボラティリティ |
シャープレシオ | 1.17 | リスクに対するリターンの効率性を示す指標 | 効率的な運用 |
トータルリターン(1年) | 14.46% | 過去1年間の株価上昇率と配当金を含めたリターン | 比較的高いリターン |
最大ドローダウン | -7.76% | 過去最大の株価下落率 | 比較的低いドローダウン |
PER | 29.29 | 株価収益率。割高かどうかを判断する指標 | 割高な水準 |
市場平均より低いボラティリティ
効率的な運用
割高な株価水準
QYLDは、市場平均よりも低いボラティリティと効率的な運用が評価されています。しかし、PERは割高な水準にあり、今後の株価上昇余地は限定的かもしれません。
投資戦略の提案
- 高配当を目的とした長期投資: QYLDは、毎月分配される高配当を目的とした長期投資に適しています。
- ポートフォリオの一部としての保有: QYLDをポートフォリオの一部として保有することで、リスク分散効果を期待できます。
- NASDAQ100指数の動向に注目: QYLDはNASDAQ100指数に連動するため、投資する際にはNASDAQ100指数の動向に注意することが重要です。
- 金利上昇リスクへの考慮: 金利上昇は、QYLDの株価に悪影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
まとめと投資判断のポイント
QYLDは、NASDAQ100指数を対象としたカバードコール戦略を採用するETFで、高配当と毎月の分配が魅力です。しかし、株価上昇余地が限定的であることや、配当金の安定性に欠ける点には注意が必要です。
QYLDの投資判断で重要なポイントと評価
総合評価:
高配当と毎月分配の魅力
→QYLDは市場平均を大きく上回る配当利回りを実現しており、毎月分配されるため安定した収入源として魅力的です。
NASDAQ100指数への連動性
→米国を代表するハイテク企業で構成されるNASDAQ100指数に連動するため、長期的な成長ポテンシャルも期待できます。
カバードコール戦略によるリスク抑制効果
→株価下落局面において、カバードコール戦略は一定のリスク抑制効果を発揮する可能性があります。
株価上昇余地の制限
→カバードコール戦略は、株価が大きく上昇した場合の利益を制限する可能性がある点に注意が必要です。
配当金の安定性
→過去の減配実績や、市場環境の変化によって配当金が変動する可能性がある点を考慮する必要があります。
元本割れリスク
→株価下落によって元本割れが発生するリスクがあることを理解しておく必要があります。
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