近年、株式市場のボラティリティの高まりやインフレ懸念から、安定的な投資先を探している方も多いのではないでしょうか?そんな中、注目を集めているのが米国長期国債ETFである「TLT」です。TLTは、米国財務省が発行する残存期間20年以上の米国債に投資することで、安定的な利息収入とポートフォリオのリスクヘッジ効果を狙うことができます。しかし、金利上昇局面では価格が下落するリスクも孕んでいます。一体、TLTはどのような特徴を持つETFなのでしょうか?
この記事では、TLTの過去10年間のチャート分析や配当金シミュレーション、リスクファクター分析などを交えながら、そのメリット・デメリットを徹底解説していきます。TLTへの投資を検討している方はもちろん、「長期投資で安定収入を得たい」「ポートフォリオに安全資産を加えたい」と考えている方も、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
この記事を読むことで、以下のメリットが得られます。
1. TLTの特徴や投資戦略を理解
2. 米国長期国債ETFのメリット・デメリットを把握
3. 過去データや将来予測に基づいたシミュレーション結果を理解
4. 配当金生活の可能性やリスクヘッジとしての活用方法
さあ、TLTの世界を探求し、あなたにとって最適な投資戦略を見つけ出す旅に出かけましょう!
TLTとは?
TLTの基本情報概要
項目 | 内容 |
---|---|
銘柄名 | iShares 20+ Year Treasury Bond ETF |
ティッカーシンボル | TLT |
運用会社 | iShares(BlackRock) |
信託報酬 | 0.15% |
ベンチマーク | ICE U.S. Treasury 20+ Year Bond Index |
設定日 | 2002年7月30日 |
運用資産額 | 約570億ドル |
特徴 | 米国長期国債 |
TLTは、ブラックロックが運営するiSharesが提供するETFで、残存期間が20年以上の米国債で構成されるICE U.S. Treasury 20+ Year Bond Indexに連動する投資成果を目指します。米国債は債券の中でも最も安全性の高い資産の一つとされており、TLTは長期金利の変動に連動した値動きを示します。
過去10年の株価チャートと分析
TLTの過去10年の株価チャートをみると、2015年から2020年にかけては、長期金利の低下トレンドを背景に上昇傾向にありました。特に、2020年のコロナ禍では、安全資産としての需要が高まり、大きく上昇しました。しかし、2021年以降は、インフレ懸念の高まりによる金利上昇の影響を受け、下落トレンドに転じています。
S&P500過去1年分チャートとの比較と分析
過去1年間のチャートを比較すると、TLTはS&P500に対してアンダーパフォームしています。S&P500が上昇傾向にある一方で、TLTは下落傾向にあり、金利上昇局面におけるTLTの弱さが顕著に表れています。
TLTで配当金生活はできる?配当金の分析
TLTの過去の配当金と増配率、その分析
TLTは、分配金を支払っており、過去10年間を見ると、おおむね安定した水準で推移しています。ただし、分配金の金額は、保有する債券の利息収入に依存するため、金利変動の影響を受けやすい点に注意が必要です。
TLTの配当金利回りの推移
TLTの配当利回りは、金利変動と逆相関の関係にあります。過去10年間を見ると、金利が低下していた時期には配当利回りも低下し、金利が上昇していた時期には配当利回りも上昇しています。
過去TLTに投資していた場合のYOCシミュレーション
年 | YOC |
---|---|
2014 | 2.92% |
2015 | 3.05% |
2016 | 3.09% |
2017 | 2.90% |
2018 | 3.03% |
2019 | 2.72% |
2020 | 2.33% |
2021 | 2.48% |
2022 | 3.69% |
2023 | 3.72% |
2024 | 4.08% |
YOC(Yield on Cost)は、投資元本に対する現在の配当利回りを表します。
例えば、2014年に投資していた場合、現在のYOCは2.92%となっていたことがわかります。
過去投資していた場合のYOCが現在投資を開始した場合のYOCより低いことから、直近の株価が下落傾向であることがわかります。
TLTの将来のYOC予想シミュレーション
年 | YOC |
---|---|
2024 | 4.08% |
2025 | 3.97% |
2026 | 3.86% |
2027 | 3.75% |
2028 | 3.65% |
2029 | 3.55% |
2030 | 3.45% |
2031 | 3.35% |
2032 | 3.26% |
2033 | 3.17% |
2034 | 3.08% |
過去10年の株価成長率をもとに将来のYOC予想シミュレーションを行ってみると、現在の株価と配当利回りが維持された場合、100万円投資すると初年度の配当金は約4.08万円となり、10年後にはYOCは約3.08%まで低下すると予想されます。
これはFRBの利上げによる金利環境の変化により、直近の債権価格げ下落していることがシミュレーションに反映されています。
今後利下げが進んだ場合、債権価格は上昇することが予想されるため、あくまで現在の金利環境をもとにしたシミュレーションであることを理解しておきましょう。
過去の成長率が継続した場合のシミュレーションであり、将来の配当金の支払いや成長を保証するものではないため注意が必要です。
TLTで月10万円の配当金を受け取るには?TLTの配当金受取シミュレーション
配当金生活をするには?毎月の配当受取目標と必要な投資額のシミュレーション ※日次更新
(毎月◯万円配当を受け取るために必要な投資額)
銘柄 | 株価 | 配当利回り | 月間配当目標 | 必要投資額 | 必要投資額 (課税考慮) |
必要株数 |
---|---|---|---|---|---|---|
TLT | $90.41 (¥14,078) |
4.07% | ¥10,000 | ¥2,949,507 | ¥4,112,731 | 293株 |
¥30,000 | ¥8,848,520 | ¥12,338,193 | 877株 | |||
¥50,000 | ¥14,747,534 | ¥20,563,655 | 1,461株 | |||
¥100,000 | ¥29,495,067 | ¥41,127,310 | 2,922株 |
為替レート: 155.71円/ドル
米国債ETF:TLT、EDV、AGGを比較!
銘柄名 | 銘柄コード | 過去1年のパフォーマンス | 配当利回り | 経費率 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
iシェアーズ米国債20年超ETF | TLT | -0.56% | 4.14% | 0.15% | 残存期間20年超の米国債に投資 |
バンガード超長期米国債ETF | EDV | -1.24% | 4.35% | 0.06% | 残存期間20~30年の米国債に投資 |
iシェアーズ・コア米国総合債券市場ETF | AGG | 2.37% | 3.81% | 0.03% | 米国投資適格債券市場全体に投資 |
TLT、EDV、AGGはそれぞれ異なる特徴を持つ米国債ETFです。過去1年のパフォーマンスはEDVが最も高く、次いでTLT、AGGとなっています。
EDVは残存期間20~30年の超長期米国債に投資しており、金利低下局面での価格上昇余地が大きいです。一方で、金利上昇局面では価格下落リスクも大きくなります。
AGGは米国債券市場全体に投資しており、リスク分散効果が高いです。経費率も最も低く、幅広い債券に投資したい方におすすめです。
TLTは残存期間20年超の超長期米国債に特化しており、金利変動に対する感応度が高いです。金利低下局面では大きなリターンが期待できますが、金利上昇局面では価格下落リスクも大きくなります。
どのETFを選択するかは、投資家のリスク許容度や投資目標によって異なります。金利動向や各ETFの特徴を理解した上で、ご自身の投資スタイルに合ったETFを選びましょう。
TLTへ過去に投資していた場合の累積トータルリターン
TLTに過去に投資していた場合の累積トータルリターンを見ると、直近1年以外、いずれもマイナスリターンであることがわかります。
TLTへ過去に投資していた場合の年率(CAGR)トータルリターン
TLTに過去に投資していた場合の年率トータルリターンを見ると、直近3年間、5年間、7年間、10年間ではマイナスとなっています。これは、金利上昇局面におけるTLTのパフォーマンスの悪さを示しています。債権投資は株式投資と比較するとディフェンシブな面がありますが、金利環境によりある程度マイナスリターンが発生する可能性があることは認識しておく必要があります。
TLTへ10年前に100万円投資していた場合のシミュレーション
年 | 評価額(万円) | 配当額(万円) | 評価額+配当累計額(万円) | 配当再投資評価額(万円) |
---|---|---|---|---|
2015 | 95.8 | 2.5 | 98.3 | 98.4 |
2016 | 94.6 | 2.5 | 99.6 | 99.7 |
2017 | 100.7 | 2.5 | 108.2 | 108.6 |
2018 | 96.5 | 2.5 | 106.4 | 106.9 |
2019 | 107.6 | 2.4 | 120.0 | 121.6 |
2020 | 125.3 | 1.9 | 139.5 | 143.4 |
2021 | 117.7 | 1.8 | 133.7 | 136.9 |
2022 | 79.1 | 2.1 | 97.2 | 95.6 |
2023 | 78.5 | 2.7 | 99.3 | 98.2 |
2024 | 71.5 | 2.4 | 94.8 | 92.8 |
TLTへ10年前に100万円投資していた場合、2020年までは評価額が増加傾向にありました。しかし、2021年以降は金利上昇の影響を受け、評価額は減少しています。配当金を再投資した場合でも、2024年時点では元本を割り込んでいます。
TLTのリスクファクター分析
項目 | 値 | 説明 | 評価 |
---|---|---|---|
ベータ | 2.11 | 市場全体の動きに対する感応度 | 市場平均よりも変動が大きい |
52週ボラティリティ | 14.81% | 過去1年間の価格変動幅 | 比較的大きい |
シャープレシオ | 0.22 | リスクに対するリターンの効率性 | 効率性は低い |
トータルリターン(1年) | 4% | 過去1年間のトータルリターン | 低い |
最大ドローダウン | -48.35% | 過去最大の資産価値の下落率 | 大きな下落リスク |
TLTのリスクファクター分析を見ると、ボラリティは小さいとはいえないことが分かります。また、最大ドローダウンも-48.35%と大きく、大きな下落リスクを抱えています。比較的リスクの低い債権投資ですが、金利環境により大きな損失を被る可能性があることも認識しておく必要があります。
TLTへの投資戦略の提案
TLTは、長期金利の変動にベットしたい投資家にとって、有効な投資対象となりえます。
- 金利低下局面では、価格上昇によるキャピタルゲインと安定的な分配金の両方を期待できます。
- ポートフォリオのリスクヘッジとして、株式などのリスク資産と組み合わせて保有することで、ポートフォリオ全体のボラティリティを抑制する効果も期待できます。
しかし、金利上昇局面では価格が大きく下落するリスクがあるため、投資タイミングには注意が必要です。
まとめ:TLTへの投資判断のポイント
TLTは、米国長期国債に投資することで、安定的な分配金収入とポートフォリオのリスクヘッジを期待できるETFです。しかし、金利上昇局面では価格が下落するリスクがあるため、投資判断には注意が必要です。長期的な投資を前提とし、金利動向をよく見極めた上で投資することが重要です。
TLTの投資判断で重要なポイントと評価
総合評価:
長期金利の低下局面でのリターン獲得
→ 長期金利が低下すると債券価格は上昇するため、TLTは大きなリターンを獲得する可能性を秘めています。
ポートフォリオのリスクヘッジ
→ 株式市場との相関性が低い米国債は、ポートフォリオに組み入れることでリスク分散効果が期待できます。
安定的な分配金収入
→ TLTは分配金を安定的に支払っており、長期投資によるインカムゲインを狙うことができます。
金利上昇局面での価格下落リスク
→ 金利が上昇すると債券価格は下落するため、TLTは大きな損失を被る可能性があります。
インフレリスク
→ インフレ率が上昇すると、債券の実質的な価値が減少するリスクがあります。
為替リスク
→ 米ドル建て資産であるため、円安になると円換算でのリターンが減少するリスクがあります。
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